【書評】ソーシャルアプリプラットフォーム構築技法

献本いただいております

著者(いわゆる、よーいちろーさん)の10年ほどのソーシャルアプリプラットフォーム開発での経験をまとめた書籍。基本的にプラットフォームの中の人での立場で書かれているわけですが、日本においてそのような立場の人というのはおそらく数えるほどしかないわけで、希少ですね。

中身を見ると、技術的なところはそれほど多くなく(JWTの生成やOAuth/OIDCのプロトコル解説などで多少出てくるくらい)、どちらかというとプラットフォーム事業者として組織体制について重点を置かれている所も多いです。これは想像だけれども、著者自身がそのような経験を多くしてきたこと(社内調整、パートナー対応、法務・経営層対応など)が影響しているのではないでしょうかね。そういう意味で本書は、同じような立場に立って物事を進めなければいけないエンジニア寄りのマネージャ、という人にズバリ響くのではないかな、と思うのです。

とはいえ、先も言ったように日本においてずばり「ソーシャルプラットフォーム」として成功している会社というのは、著者の元職であるmixiの現状を考えてもほとんどないと言ってよく、どちらかというとゲームプラットフォームに比重がおかれているケースが多いかと思います(現在のこの辺の事情はあまり詳しくないので割愛)。なので、おそらく著者と現在全く同じ立場にいる人というのはそれほど多くはないでしょう。

ただし、「ソーシャル」でなくても「プラットフォーム」という形態のシステム/ビジネスは広告などを筆頭に国内でも広く普及しており、多数のステークホルダーを抱えるこの「プラットフォーム」提供というビジネスに対して、共通で抱えるエンジニアリング/アーキテクト/マネージャの悩みやあるあるになっているのではないかと想像します。「ソーシャルプラットフォーム」というのは、そもそも「ソーシャル」であることからユーザサイドまで含めてステークホルダーがさらに多岐にわたるわけで、つまり場合分けの数でほぼ最大になっており、それらのケースが網羅されている本書は、必要なところを抜き出す形であっても参考にできるのではないでしょうかね。

蛇足

著者の他の単著で自分世代で有名なものと言えば「OpenSocial入門」なわけですが、ちゃんとそこらへんの歴史から触れられており、著者がどのようにそれを総括しているか、という観点で見ても興味深いです。